病気が魂を完成に向かわせる


中年以後は誰でも、どこか五体満足ではなくなります。
一見健康そうに見えても、糖尿だ、高血圧だ、緑内障だ、痛風だ、神経痛だという人はいくらでもいます。
病気が治りにくくなることは悲しいことですが、誰の上にも一様に見舞う公平な運命です。


しかし、その時初めて私たちはわかるのです。
歩けることは何と素晴らしいか。
自分で食べ、排泄できるというのは、何と偉大なことか。更にまだ頭がしっかりしていて多少哲学的なことも考えられるというのは、途方もない僥倖なのかもしれません。


こういうことは中年以前には決して考えないことでした。
歩けて当たり前、ほとんどの人に感謝はありません。
病気や体力の衰えは望ましいものではありませんが、突然病気に襲われて、自分の前に死に繋がるような壁が現れたとき、初めて人は肉体の消滅への道と引き換えに魂の完成に向かうのです。

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